米国大手コーヒーチェーンがインスタントコーヒー事業に乗り出すニュースに関して、ちょっと批判的なことを当ブログに書いてしまいましたが、それはインスタントコーヒーの存在そのものを否定しているからではありません。

インスタントコーヒーというのは、「豆」そのものを加工したものではありません。挽いた粉にお湯を注いで、いったん出来上がったコーヒーを、フリーズドライ技術で粉末状にしたものです。だからそれは、珈琲豆とはまったく別の製品であるはずです。それを「これはすごい優秀な珈琲豆ですよ」と言って売っている珈琲豆屋が、「挽きたて」だとか「本格ドリップ」だとか言って、更には足りなくなった香りを補うために香料を混ぜたりした加工品を堂々と販売しているのって、ちょっと滑稽に思えるのです。

大手コーヒーメーカーのインスタントコーヒーに対するスタンスはともかくとして、それがある場面ではとても便利で重宝するものであることは誰もが認めるところでありましょう。たくさんの人が集まるような会議においては、インスタントコーヒーは重宝するでしょうし、災害の被災地などでも、お湯さえあればいつでも温かいコーヒーが淹れられるというのはとてもありがたいことだと思います。それに、気持ちが入ったおもてなしであれば、インスタントだって美味しく感じるものです。



今日は第3金曜日でお休みをいただきましたので、お客様が紹介してくれた中古レコード店に行ってきました。看板らしい看板もないその店は、紹介してもらわなかったらならば、お店だとはまず分からないでしょう。店内にはダンボール箱に入れられたLPレコードが、床一杯に置いてあります。ダンボール箱とレコードで踏み場のない狭い店内に、レコードプレーヤーが数台とスピーカーセットが何台か置いてあります。そして、そのプレーヤーからは寺尾聡さんの歌声が流れていました。

「いらっしゃいませ」という一言の後、頑固そうな店のおじさんは黙ったきりで、その中を私は黙々とレコードをひっぱり出してはジャケットに見入ります。しばらくそんな時間が続いた後、店のおじさんは「良かったらどうぞ」と言いながら、インスタントコーヒーで淹れたホットコーヒーを私に差し出してくれました。

「これをかけてもらっていいデスカ?」と、私がおじさんに渡したレコード盤は、クイーンの「オペラ座の夜」。ブライアン・メイのエレキギターの轟音が、瞬く間に部屋中を満たしました。