今日のニュースに、米スターバックスがインスタントコーヒー市場に参入するという情報がありました。昨年の大幅な店舗整理と人員削減が話題になったばかりの同社ですが、正直このニュースには驚かされました。

今、日本では少しでも品質の良い豆を提供したいという珈琲豆店が多くなり、産地指定モノや農園指定モノの豆を扱う店が増えてきました。かくいう当店もそんな店の1つであります。でも、10年前くらいまではこんな状況ではありませんでした。珈琲豆店では、いつもの定番の「ブラジル・サントス・No.2」「コロンビア・スプレモ」といった豆が並んでいて、地域指定の豆なんて数えるほどしかありませんでした。その状況を一変させたのが、スターバックスコーヒーの日本上陸でしょう。スタバのバイヤー自らが世界中の農園を訪ねて良質な豆を買い付け、それを店頭で提供し始めたのです。

そんなプレミアムコーヒー市場に先鞭をつけた同社は、その空間さえもプレミアムらしく仕立てて、都会のオアシスよろしく優雅なひと時をお客様に与えて、一躍、日本のコーヒーチェーンのトップブランドに躍り出たわけです。私も東京で会社勤めをしていた頃は、よく利用させていただきました。しかし、その後の地方都市への出店ラッシュなどを見ていて、「これではまるでマクドナルドみたいだな」と思っておりました。都会のオアシスは、気がついてみれば地方のスーパーマーケットに隣接されていたり、デパートの一角に入っていたり・・・。そして今回のインスタントコーヒー市場への参入のニュースです。

日本の大手コーヒーメーカーも、かつては高い志を持った優良コーヒー豆店からスタートしました。世界各国の優良豆を買い付け、自分の農園さえも海外に持つにいたったメーカーもあります。でも、ほとんどのメーカーは「いかに利益を追求するか」という企業倫理に基づいた結果、大量生産できて収益性も良い缶コーヒーを売り、インスタントコーヒーを売り、そして自らのブランド力を過信して各種のコーヒー以外のフードマーケットへと参入するに至ったのです。「挽きたて」だとか「ネルドリップ」だとか、キャッチーなコピーを並べた美味しそうなイメージの缶コーヒーやインスタントコーヒーを、スーパーマーケットの棚に並べれば並べるほど、自分の原点を見失うことになっていくその自己矛盾を、どうやって解決していくつもりでいるのでしょう。

ただ、日本の大手メーカーやスタバの選択は間違ってはいないでしょう。彼らは成長を止めるわけにはいきません。追求した利益を、株主へと還元せねばならない義務を背負っているですから・・・。

ちょっと今日は毒のある文章になってしまいましたね。反省です。ひとつだけ言えること。それは、十色珈琲の珈琲豆がインスタントコーヒーになったり、スーパーマーケットの棚に並ぶことは決してないということです。