No.011 / 2004年08月30日

「パッチ・アダムスが残していったもの」

 エッセイのNo.7(「パッチ・アダムスがやっ てくる!」)で紹介させていただきました「パッチ・アダムス ユーモアセッション in 塩尻」が、8月28日、塩尻文化会館レザンホールにて開催されました。もちろん店主も妻とともにこのセッションに参加させていただきました。

 人口わずか65,000人の小地方都市、長野県・塩尻市に、世界的な有名人であるパッチ・アダムスさんがやってきました。彼の講演会の内容等について云 々言うよりも、このイベントを実現させたことに塩尻市の未来を垣間見た思いです。発端は当店のお客様でもいらっしゃいます道化師のTさんの「パッチを塩尻 に呼びたい!」という純粋な思いから始まったのです。そしてTさんが発足させたNPO団体が「しおじりスマイルコラボレーション」です。

 今回のこのイベントは、塩尻市とスマイルコラボレーションの協働です。
 協働。
 一昔前の辞書にはその言葉さえなかった漢字2文字こそが、これからの日本を変えるキーワードだと思います。街づくりを行政に任せきりにした結果が、いわ ゆる「箱モノ政治」を中心とした、一部の人々の利権を優先した市民の意見不在の街づくりでした。最近、TV等で大きく取り上げられているのが、大阪・泉佐 野市の例です。1994年の関西国際空港の開港に合わせた壮大な未来都市プランは、今となっては「絵に描いた餅」と化し、ついに今年3月に財政非常事態宣 言を発令するに至りました。残されたのは市民に活用されもしない壮大な「箱モノ」の数々、補修されない古びた学校、そして市民サービスの切捨てという最悪 のシナリオです。国内最上級を謳うオペラ劇場、「市民芸術館」を10億円を超える税金を注入して建設したお隣の松本市にも同様の未来が待ち受ける可能性は 否定できません。

 今回の「パッチ・アダムス ユーモアセッション in 塩尻」にはサブタイトルが付いていました。
 「愛と笑いの地域づくり」。
 今回のセッションを、"有名人を招いて講演会をおこなった"という記録だけに止めないようにしなくてはならないと感じました。このイベントを成功させる ために寸暇を惜しんでがんばってくれた市民の方々がいるのです。市民主導の町の活性化。その導火線の発火点となるべく、パッチ・アダムスさんの「愛と笑 い」が必要であったのだと感じました。私たちが住みやすい町、愛することのできる町、それを育んでいくのに第一に必要なのは決して壮大な施設ではありませ ん。そのために必要なのは「愛」と「笑い」だとパッチ・アダムスさんは教えてくれたのです。そしてその「愛」と「笑い」の地域づくりの過程の中で育まれる であろう文化が、その受け口としての「箱」を要求した時、初めて施設の建設が議論されるようになって欲しいと願います。
  


  レザンホールにて講演するパッチ・アダムスさん。その人の処方する薬は、「愛」と「笑い」。それが痛みに喘ぐ人々を 苦痛から救い上げます。いくら素晴らしい錠剤があろうとも、真心のこもった感情には及びません。父を亡くす前に、パッチに出会えていたら・・・そんなこと を考えました。

 今年1月、胆嚢摘出手術を受けた際、私を一番安心させてくれたのは、家族の笑顔でした。これからは今以上に、心にユーモアを持って家族と接しようと思い を新たにしました。


 
セッションの最後、会場にはレイ・チャールズが歌うスタンダード・ナンバーが流れました。
 「What A Wonderful World」。
 この素晴らしい星に生まれたことに感謝し、すべての出会いを自分の生きる勇気へと換えていこう・・・そう心に誓う店主なのでした。




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