No.049 / 2007年5月11日

「れんげ草に囲まれて」

 
 ゴールデン・ウィークの余韻を楽しむ余裕もなく、通常の日常が戻ってきた方も多いのではないでしょうか?。当店は連休中もいつも通りの定休カレンダー だったため、土曜日以外は通常営業しておりました。「いつもと同じ日常があって、明日も明後日もその日常が続くことこそが幸せなんだよ」と家族には偉そう に諭してはみるものの、遊びたいさかりの我が家のこどもたちは少々不満に感じているかもしれません。私は大人になってからいくつかの観光名所を訪れていま すし、会社員時代には海外出張も何回か経験させてもらっておりますので、「旅行よりも家がイチバン」なんて言うことができますが、家族にしてみれば行って みたいところがたくさんあることでしょう。TVで放送される連休お決まりの車の大渋滞のニュースを指差し、「あんな目に遭いたくないよなア」などと家族に 同意を求めて、何とか家族サービスをまったくしないぐうたら店主を正当化しようとしている自分がいたりします。

 そんなぐうたら店主が感謝しているイベントが「こどもの日」にありまして、そのイベントに子供、妻とともに参加してきました。「れんげ草まつり」と題さ れたそのイベントは、地区の「子供育成会」と、PTAとの共同参画の企画であり、8年ほど前から続いているものです。子供たちを自然の中で遊ばせ、楽しん でもらおうという企画なのですが、今年は店主もPTAの役員をさせてもらっている関係から、このイベントの進行役を、少しではありますが手伝わせていただ いた次第です。

 冬の間は休んでいる田んぼに、れんげ草の種を蒔いて、春までれんげ草を育てているNさんの田んぼでイベントはおこなわれました。れんげ草を育てることで 「根粒菌」を繁殖させることで土壌を肥沃にさせるという、日本では一般的におこなわれてきた有機農法を、今でも実践されている田んぼです。かつては日本中 で見られたこの光景も、化学肥料の普及によって、あまりお目にかかることがなくなってしまいました。

 れんげ草畑に集まったこどもたちは、れんげ草の花を摘んで首飾りを作ったり、輪になって手をつないで、複雑にからみあった手をほどいていく遊び、「人間 知恵の輪」などをして楽しく遊びました。遊んだあとはれんげ草畑で焼肉大会。遊んで食べて、こどもたちは十分に満足したことでしょう。今でもれんげ草を 使った古来からの農法にこだわっているNさん、そして毎年、このイベントを開催してくれている地区の役員の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。





 今のこどもたちはゲーム機で遊ぶことが 多いので、自然の中の遊びにどれくらい興味を示してくれるか心配していましたが、そんな心配も杞憂に終わりました。こどもたちは熱心にれんげ草の花を摘ん で首かざりを作ったり、畑の中を思う存分に走り回っていました。こどもたちがゲーム機に熱中するのは、こどもたちがそれを積極的に選択しているわけではな くて、もっと自然の中で遊べる楽しさや、安全に思いっきり遊ばせることができる社会環境を提供できていない、我々おとなにその責任があるんだよなあ・・・ と考えさせられました。お母さんたちも昔を思い出して、れんげ草の首かざりの作り方を一生懸命にこどもに教えてくれていました。このこどもたちが大人にな る頃には、れんげ草の首かざりを作ることのできる大人はほとんどいなくなるだろうな・・・と考えると、なんだか淋しい気がします。

 観光地での思い出もいいでしょう。遊園地に行った思い出も素敵に違いありません。
 でも、こどもたちが大人になった時、青空の下でれんげ草に囲まれて過ごしたあの日のことを、何よりも大切に思い出して欲しいと願う店主なのでした。
 


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