No.043 / 2006年12月26日

「 クリスマスとハワイ・コナ」


 
 今年のクリスマスも、もたくさんのお客様からのリクエストにお応えして、「ハワイ・コナ・ エクストラファンシー」を焼きました。それほど多くはない量での仕入れだったとは言え、他の豆の2倍もの価格の豆が、この2日間であっという間に売れてし まいました。コーヒー好きな皆様が、いかに美味しいコーヒーを求めているのかというのをあらためて実感した次第です。

 店主が「ブルー・マウンテン」に対してはあまりいいイメージを持っていないのとは対照的に、ハワイ・コナは店主の大好きな豆の1つです。深緑で大きくそ ろった豆粒。ハンドピックしてみても、不良豆の混入は本当にわずかです。焼いている最中のバチバチというハジケの音の大きさからしても、他の豆とは一線を 画す雰囲気を十分に備え持った豆です。

 「名物にうまいもの無し」
 誰か言い出した言葉かは知りませんが、この言葉はとても的を得た言葉だと思います。有名になればなるほど、大量生産されコスト削減を余儀なくされます。 食べ物となれば賞味期限を延ばすために保存料をてんこ盛り・・・これでは名物がうまいわけがありません。ハワイ・コナでも例外ではありません。100g千 円以上もするのに、いつ焙煎されたかわからない・・・そんな状態で売られている豆をたくさん見かけます。極めつけはハワイへ遊びにいった人からもらうお土 産です。もちろん、ハワイにもきちんとしたロースターはいるでしょうから、焼きたての新鮮な豆を良心的な値段で販売しているお店もあるかもしれません。し かし、大半は大きなショッピング・センターに無造作に並べられた、日本のスーパーマーケットに並べられたコーヒー豆と同じ扱いです。それに加えて、アメリ カ人は「フレーバー・コーヒー」を好んで飲みます。これはアメリカへ旅行して、コーヒーを販売している店に入ってみれば、大抵は目にすることができる商品 です。、コーヒー豆に「バ ニラ」「ストロベリー」「ココナッツ」などの味を後から加えたもので、焼いた豆にバイラ・オイルやストロベリー・シロップを絡めて袋づめして売っている のです。新鮮なコーヒーはガスを排出していて、これが良い香りを放ちます。それなのにシロップでべとべとになった豆は、豆本来の香りを失ってしまうのは当 然、豆に付着したシロップが酸化して、コーヒーの味をどんどん損ねていってしまいます。雑に扱われたコナや、シロップ漬けの甘ったるいコナ、それらを飲ん で「ハワイ・コナは嫌い」という感想をお持ちになっていることが結構多いのです。

 では、当店で販売しているハワイ・コナなら絶対に美味しいのか?と問われると、それは難しいご質問です。牛肉が高くなればものすごい霜降りになります し、ケーキならば贅沢なトッピングが載っているかもしれません。しかし、コーヒーはその違いを決定的に表すには、あまりにも素朴な飲み物です。「倍の値 段」するから、「倍の味」であるわけではないのです。店主がハワイ・コナに持つイメージは、「クリーンな味」であることに尽きます。飲み終わった後に、 まったく嫌な後味を残しません。そして良質なコーヒーのみが持つ「甘み」。これは焙煎したてよりも数日経つと更に増して行きます。できることならば豆のま までお買い上げいただき、その大粒の豆をガリガリと挽くことの感触を楽しみつつ、日ごとに深まる甘みの変化を存分に楽しんでいただきたいコーヒー豆です。

 
 一回の仕入れが何十キロともなれば、軽くウン十万もする生豆です。当店で簡単に常に販売できるような豆ではありません。高い仕入れだからといって、当店 では、多くの利益率をかけているわけでもありません。ハワイコナがたくさん売れても、当店の利益は通常の豆とまったく同じです。ハワイ・コナを焼くときは いつも、「もう、しばらくはコナは仕入れるのをやめよう」と思います。それは、「お手頃な価格で美味しい豆を・・・」という、我が店のポリシーにも反する ことだと思うからです。今年のクリスマスにもコナを仕入れるのにはためらいがありました。それでも、多くの常連様から、「去年のコナが忘れられない」、 「今年も待っている」というお声をたくさんいただき、販売させていただくことになった次第です。

 
 たかがコーヒー。
 されどコーヒー。
 忘れられない味を確かめたくて、今年もコナを焼きました。
 コナを買ってくれたお客様の中のどれくらいの人が、このコーヒーの味を気に入ってくれたのだろう。
 美味しかったヨ・・・その一言が返ってくるのであれば、また来年も、ハワイ・コナが店頭に並ぶかもしれません。

 


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