No.039
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2006年9月29日 |
「 自然の香り」
店主の好きな樹木のひとつに、「キンモクセイ」があります。長野県にUターンするまで住ん でいた街の駅に、それが何本か植えられてありました。あわただしく早足で駅に向かう途中、ふわっと鼻先をかすめる芳香。ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に乗る こ との憂鬱を、一瞬でも忘れさせてくれるその香りが大好きでした。 この地に家を建てることになり、庭にいくつかの木々を植えましたが、やはりキンモクセイが植えたくて、庭の空いているスペースに1本だけ植えました。は じめてそのキンモクセイの香りが漂ってきたときの感激は忘れられません。家のリビング一杯に香る華やかな香り。たった一本のキンモクセイの木が放つその香 りの力強さにびっくりしたものです。そして、今年もキンモクセイがたくさんの花をつけました。
珈琲も香りを楽しむ飲み物です。当店が焙煎してから1週間以内の豆のみの販売にこだわるのも、その香りを十分に楽しんでいただきたいからに他なりませ ん。今日、妻がTVを見ていたら、「コーヒーを1日3杯飲むと健康に良い」という内容を放送していたとのことで、「それはそうだろう、フムフム・・・」と 納得しながら見ていたら、なんと「マグネシウムをたくさん含んでいるインスタントコーヒーならば尚良い」というような内容の結末だったそうで、それで一気 にガクッときてしまったようです。 もちろん、特定の症状に対する健康法の1つとして紹介されていたのでしょうけれども、インスタントコーヒーを「健康に良い」といって放送してしまうTV 局の無謀さに、さすがの店主もあきれてしまいました。インスタントコーヒーのほとんどに「香料」が添加されています。その香りで人間の心や病が癒されると は、店主には到底思えません。 カカオのようなガテマラの甘い香り。 バラの花のようなエチオピア・モカの香り。 力強く存在を主張するマンデリンの香り。 自然が育んだ珈琲の実の種に、焙煎という人間の知恵が加わってはじめて現れる不思議なアロマ。 新鮮な豆を求め、自らの手で豆を挽き、愛情をもって珈琲を淹れる。 その労を苦ともしない人のみが、その自然の不思議を享受できるのです。 |