No.038 / 2006年8月31日

「 夏の終わり」


 
 短い信州の夏もそろそろ終わりを予感させる今日この頃です。夏の終わりは何だか悲しい気持 ちになるのは店主だけでしょうか?

 グラウンドを去り行く高校球児の後姿
 いつの間にか辺りを包む夕闇
 夜を待ちわびて鳴き出した虫たちの声

 何よりも店主が夏の終わりに悲しくなるのは、5年前に他界した父の最期の夏を、今でも鮮明に思い出すからでしょう。

 先月、中学時代の友人が他界しました。中学時代、毎朝、店主を迎えにきてくれた友人です。
 いつでもノロノロと登校の準備をしていた私は、きまって彼を玄関に待たせていました。それでも彼はそんな私に愛想をつかすこともなく、毎日我が家の玄関 にやってきました。そして学校の正門で遅刻を見張る厚生委員の脇を、すばやい駆け足で一緒に走り抜け、その後はお決まりの担任からの呼び出し。そんな ちょっとばかり悪ふざけが過ぎた中学時代の思い出を共有する友の死が、尚更、今年の夏の終わりを、悲しい気持ちにさせるのかも知れません。

 悲しみは、近しい人との永遠の別れ以外にもたくさんあります。それは家庭の中であったり、学校の中であったり、職場の中であったり。人が生きている限 り、避けては通れないものです。

 それでも、私たちは生きている。生きているから、「人生」を続けていられる。 きっと来年もまた、眩いばかりの太陽が燦々と降り注ぐ夏はやってくるで しょう。

 もし貴方が、今は悲しい気持ちでいっぱいであれば、焦ることなく、じっくりと少しずつその悲しみを解きほぐしていってくれればと思います。どうしてもそ の複雑にからまった糸がなかなかほぐれないときは、当店に立ち寄って、店主のばかな話しにでも付き合ってみてください。コーヒーの暖かな香りが、その凍り ついた気持ちを、少しでも溶かしてくれると店主は信じているのです。



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