No.036 / 2006年6月21日

「 ゴミを買う時代」


 
 先日、いらなくなった冬物の衣料や、朽ちたガーデニング用品などを処分しようと思い立ちま した。季節外の衣料や、ある程度の大きさを超える日用品の廃棄は、通常のゴミステーションに持ち込むことができないため、各家庭が行政から指定されている 処分場まで持ち込むことになります。店主の住む長野県塩尻市の場合、「クリーンセンター」という施設があり、ここに廃棄物を持ち込むことができます。ただ し、無料で廃棄物を引き取ってくれるわけではなく、10kgあたり\100の処分料がかかります。

 店主が「クリーンセンター」を訪れたのは土曜日の午前中です。土曜日ということもあり、廃棄物を載せた車が何台かで列を作っておりました。まずは廃棄物 を車に乗せたまま、車ごと計量されます。その後指定の場所に廃棄物を降ろし、再び計量ポイントまで引き返し、廃棄物がカラになった車を計量します。この2 回の計量の差が、すなわち廃棄物の重量ということになるわけで、店主の場合は、50kgで\500の処分料がかかりました。

 「クリーンセンター」に行って感じるのは、人間が排出するゴミの量の多さです。山のように積まれた様々なゴミは、いったいどこからやってくるのか・・・ そんなことを思ってしまいます。季節ごとに新調する衣類、まだまだ使えるのに買い換えられる家電製品、一品ずつ丁寧に梱包された食品群、人間が追及した利 便の代償が、うず高く積まれたゴミの山というわけです。

 クリーンセンターを訪れた日と前後して、ゴミ問題を特集しているTV番組を見ました。世界遺産にも登録されているカンボジアの「アンコール遺跡群」に関 する内容でした。かつては豊かな緑地が拡がっていたアンコール・ワット周辺も、観光客が捨てていくおびただしい量のゴミが問題となっており、数キロ離れた 場所には、東京の「夢の島」を思わせる巨大なゴミ捨て場が設けられていました。観光客目当てのホテル開業ラッシュで、静かな農村は観光ビジネスの街へと変 貌し、そのホテルが垂れ流す汚水が近隣の湖を汚染し、水上生活している民族は蔓延する病気と闘っているのです。

 また、ほとんど同じタイミングで、当店の常連さんが、アルピニストである野口健さんの講演会の企画に参加されているという話しを聞きました。TV等でご 存知の方も多いかと思いますが、野口さんは日本のシンボルである富士山の渓谷に堆積したゴミの清掃活動を積極的にされている方です。なんでも、富士山に堆 積されたゴミを完全に取り除くには百年以上の月日が必要なのだとか・・・。悲しい現実です。(野口健さんの講演会は7/9に松本文化会館大ホールにて開催 されます。興味がある方は、当店にチラシが置いてあるますので、ご自由にお持ちください)

 豊かな物資があたり前の世の中、先進国の人々は物欲を満たすために更なるビジネスを考え出し、そのビジネスがまた新たな物欲を生み出します。そして庶民 は目先の物欲を満たし、しばらくするとそれらはいとも簡単にゴミとなっていくのです。靴も履けずに米の一粒を求めている国の人たちは、先進国が生み出すゴ ミの山を、どんな気持ちで見つめるのでしょう。

 かくいう店主も、日々湧き上がる物欲に身をまかせ、くだらないTVに大いに笑い、今日も大枚をはたいてゴミを買い求めているのです・・・。


(せめてもの罪滅ぼしという訳ではないのですが、当店ではコーヒー豆を入れる容器をご持参のお客様には、お会計から若干の値引きをさせていただいておりま す。コーヒー1種類につき\10の値引き。3種類のコーヒー用の容器をご持参の場合は、\30の値引きとなります)




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十人十色のコーヒータイムを演出する、Toiro Coffeeです。
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