No.034 / 2006年3月29日

「 放課後の校庭の少年たち」


 先日までアメリカでおこなわれていた「ワールド・ベースボール・クラシック (W.B.C)」は、日本が大会の初代金メダル国となり、日本中を大いに湧かせてくれました。永遠のライバル・韓国と、常勝軍団・キューバを破っての世界 一には、久しぶりに野球の醍醐味を十二分に味あわせてもらいました。

 キューバに準決勝で敗れはしたものの、野球の強さには定評があり、優勝候補の一角に挙げられていたのが「ドミニカ」です。我が愛する広島カープが野球学 校を作って、有望な選手の発掘に力を入れていることもありまして、店主はドミニカを応援していたのですが、残念ながら同じカリブ海の野球強国・キューバに はかないませんでした。

 ドミニカはカリブ海に浮かぶエスパニョーラ島の東半分を占める国で、その広さは九州よりちょっと大きめくらいです。西半分はハイチが占めておりまして、 ドミニカは過去にハイチから独立してできた国です。主要な産業として、砂糖、タバコなどの栽培・輸出があげられますが、コーヒーの栽培もかなりの割合を占 めております。W.B.Cでのドミニカの健闘にあわせたわけではありませんが、当店でも春の限定販売豆といたしまして、このドミニカのコーヒーを販売して おります。

 カリブ海の国々が産するコーヒー豆は、他の国の豆と比べると、甘み・良質な酸味がピークとなる点が、若干浅い煎りで現れるのがポイントで、当店でも当店 の標準ローストである「シティ・ロースト(やや深煎り)」よりも若干浅めに煎って(ハイ・ロースト〜シティ・ローストの中間くらい)提供しております。 ナッツのような植物味のある口当たりの中に、程よい甘みと酸味をあわせ持つボディは、マンデリンなどのコク深い味わいとは対極にある味わいです。まだドミ ニカのコーヒーを口にしたことがないお客様は、ぜひともこの機会にお楽しみいただければと思います。


 野球といえば、店主が小学校時代には定番の遊びでした。学校が終わると一目散に家に帰り、バットとグローブを自転車の荷台にくくりつけて、放課後の校庭 に集合しました。当時の店主のヒーローは、広島カープの山本浩二や江夏豊でした。白いTシャツに山本浩二の背番号「8」を自分でマジックで書き込んでその 気になっていたものです。

 しかし時代は流れ、放課後の校庭で野球に興じる少年たちの姿が消えてしまいました。いえ、野球に限った話しではありません。放課後の校庭は子供の遊び場 ではなくなってしまったのです。塾や、家の中でゲームで遊ぶのがあたり前の時代になったのです。それに加えて子供をターゲットにした凶悪な犯罪が多発した ことも原因の1つでしょう。

 W.B.CのTV放映の中で映し出された、キューバの子供たちがボロボロのグローブとバットで野球に興じる姿は、日本が無くした大切なもののように思え てなりません。

 放課後の校庭には、少年たちの日々が確実にありました。
 笑いも、悔し涙も、友情も、すべてが放課後のグラウンドにはありました。
 泥にまみれたシャツとズボンで白球を追いかける少年たちの姿を、もう一度取り戻すことはできないのでしょうか。
 W.B.Cでの金メダル獲得。
 松坂の快投。
  イチローの雄たけび。
  福留の執念。
 それらが少年たちの心を、再び、放課後の校庭へと向かわせてくれると、店主は信じたいのです。



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