No.031 / 2005年12月30日

「回顧 -2005-」

 
 2005年も残りわずかとなり、当店の最後の営業もあともう少しで終了しようとしております。今年1年を無事に終えることができ、店主も妻も感謝の気持 ちで一杯でおります。

 今年の初め、私は2つの目標を決めました。
 1.決まった定休日以外にお店を閉めることがないようにすること
 2.お客様が一人も来ない日をなくすこと

 上記の2点の目標は、いずれも個人商店を経営する上では当たり前のことです。しかしながら、過去の2年間、当店はこの当たり前の目標をクリアできなかっ たのです。すでに前のエッセイにも書きましたが、2003年の12月に胆石による急性胆のう炎で入院した店主は、2004年の1月に胆のう摘出の手術を受 けました。したがいまして、2003年と2004年のこの期間はお店を臨時休業とせざるを得ませんでした。1年間の営業を終えても、達成感はなく、何かが ぽっかりと抜け落ちてしまっているような気持ちになったものです。

 そして本年度、ようやく1年間すべての営業日を無事に開店することができました。胆のう摘出後の体質の変化に苦労したりもしましたが、そのほかに大きな 病気をすることもなく、寝込むほどの風邪をひくこともなく、1年間を終えることができました。思えば、学生時代、会社員時代、必ず1年間のうちに何日かは 病気で休むことがありましたから、このように1年間を元気に過ごせたのはかなり久しぶりのような気がします。自営業という職業に身を置く以上、来年からも 引き続き気持ちを引き締めていかないと・・・と、思う店主です。

 昨年、一昨年と、お客様一人の来店も無かった日が数日ありました。大きなタメ息とともに店 じまいの準備をする。そして 無口なまま家族と夕食をともにする。それは何とも言えず寂しい時間です。しかしながらそんな時に店主の支えとなったのは、いつも笑顔で当店に足を運んでく れる常連のお客様たちの笑顔でした。きっと明日は○○○さんが来てくれるかな?・・・そんな希望が、また明日へと私たちを向かわせてくれる、大きな勇気と なったのです。

 お客様が一人も来ない日をなくす・・・。一般的な小売店であれば、お客様が来ない日などがあろうはずもありません。しかしながら当店は、珈琲豆の豆売り 専門店で喫茶はやっておりませんし、商店街や大きなスーパーマーケットと同じ敷地内に店舗を構えているわけではなく、さびれた住宅街のはずれで、ウサギ小 屋のような小さな店舗で営業しております。さらには、本当に珈琲が好きな方の口コミだけを頼りにしていて、目立つような広告宣伝を控えているという事情も あります。このような条件の中で、毎日かならず誰かお客様が来てくれるというのは、店主からしてみても奇跡のようなことに思えるのです。そして今年は、毎 日必ず誰かが当店に足を運んでくれました。晴れの日も、雨の日も、風の日も、雪の日も、どんな時であっても当店に足を運んでいただいたすべてのお客様に、 ただただ感謝の気持ちで一杯です。本当にありがとうございました!

 良いものは必ず認められる・・・。
 それだけを信じて毎日豆を焼いてきました。それは、来年も、再来年も、そしてその先もずっと続けなくてはなりません。
 奇跡は突然にやってきてはくれません。強い信念と、それを継続するチカラ。それがきっと奇跡をよびおこすのです。

 大きな奇跡をおこしたい。この小さな店から。
 店主だけでなく、すべてのお客様が喜んでくれる大きな奇跡を。
 それが何なのか、店主にもわかりません。
 でもきっと、この小さな店の、小さな日常から、それは生み出すことができる・・・
 そう店主は信じているのです。




<エッセイのTopに戻る >

十人十色のコーヒータイムを演出する、Toiro Coffeeです。
http://www.toirocoffee.com