No.022 / 2005年3月24日

「ピーベリー」


 当店では焙煎前の生豆をひとすくいづつトレイに取り分けて、カビ豆や虫食い豆などの不良豆 を取り除く”ハンドピック”という作業をおこなっております。これはかなり根気のいる作業であって、大きな釜で大量に焙煎をおこなう中規模〜大規模な焙煎 店ではなかなかできないことです。

 「当店では丁寧にハンドピックをしています」といったところで、本当にハンドピックされているかどうか、それをわざわざ丁寧に確かめるお客様 もいらっしゃらないでしょうし
(豆を皿などにあけてみて大型店の豆と比べていただければ一目瞭然なのです が)、なかなか表立って当店のアピールになるようなものでもありません。日ごろから、丁寧にハンドピック をおこなっていることの証しをもっとわかりやすい形でお客様に見せてあげられればいいのに・・・などと考えておりました。そして思い立ったのが「ピーベ リー」のハンドピックです。

 コーヒー豆というのはコーヒーの木になる実の種子です。通常はピーナッツのように2つの種子が向かい合わせになって1つの殻の中に収まっています。向か い合わさっている部分は平らなので、平豆(フラットビーンズ)と呼ばれます。しかし、中には種子が2つにならず、ひとつだけのまま実の中に入っているもの があります。この種子は丸い形をしているため、平豆に対して、丸豆(ピーベリー)と呼ばれています。コーヒーの種類によってピーベリーの混ざっている率は 変わりますが、ほとんどの種類のコーヒー豆が、数パーセントの丸豆を含んでいます。

 豆の大きさを厳密に選別して出荷する国では、このピーベリーのみをより分けて、単独の商品として出荷する場合があります。最もメジャーなのはブラジルで しょう。ブラジルではコーヒー豆のサイズをスクリーンサイズと称して厳密に選別しています。ブラジル・サントス・No2-18という豆であれば、スクリー ンサイズが18ということになります(19が規格上の最大サイズです)。選別されたピーベリーは、”ブラジル・ピーベリー”として出荷されます。ブラジル に限らず、いくつかの国において、”ピーベリー”が出荷されています。

 当店にて昨年の秋から販売しているコーヒーで、ガテマラ・ローズオブオークランド農園のコーヒー豆があります。この農園のコーヒー豆には比較的多くの ピーベリーが含まれていました。不良豆をハンドピックしながら、これらのピーベリーを少しずつ店主は拾い集めてみました。ガテマラのピーベリーというのは 市場であまりみかけません。さらにはローズオブオークランド農園の豆のピーベリーという商品は、おそらくは正式には出荷されていないでしょう。これを店頭 にて販売できれば、丁寧なハンドピックの何よりの証しとなるのでは・・・と、店主は考えたのです。

 1回に焙煎する生豆の中に含まれているピーベリーはわずか数十グラムです。それをコツコツと集めて、半年がかりでやっと1回分の焙煎量をためることがで きました。本日から店頭に並びますが、販売量はわずか2kgです。運がよければ当店の”ガテマラ・ローズオブオークランド・ピーベリー”に出会えるかもし れません。すべてのお客様に店主のハンドピックによる”ピーベリー”を販売できるわけではありませんが、それが10人であってもも、数人であってもも、 たった一人であっても、当店の姿勢が伝わってくれればと願っております。
 




(左上)
ハンドピックにて一粒づつ拾い集めた丸豆。

(右上)
通常の生豆(平豆=フラットビーンズ)。

(左下)
焼きあがったガテマラの丸豆。その希少性から、ピーベリーの卸値は、平豆よりも高く設定されることが通常です。当店では店主が自らハンドピックしただけの ことですから、通常のガテマラ豆と同じ値段で販売させていただきます。


  余裕があるときは、他の豆でもピーベリーのハンドピックをおこなっています。今、ハンドピックしているのは、インドネシア・スラウェシ島・トラジャ地区産 の、”カロシ・ランテカルア”のピーベリーです。毎回ではなくて、店主の気が向いたときに少しづつピックしておりますので、いつごろまとまった量になるか わかりません。できれば本格的な夏になる前に販売できれば・・・と思ってはおりますが・・・。今回のガテマラ・ローズオブオークランド・ピーベリーを入手 できなかった方は、次回に期待してください。

 丸豆だからと言って、大きく味が変わるわけではありません。基本的には"見て楽しむ豆”であると店主は思っております。そんなわけで、ピーベリーは挽き 売りは考えていなくて、豆でのみ販売させていただこうかと考えています。運良く当店のピーベリーを購入できたお客様は、ぜひともそのかわいい丸豆を手挽き のミルでゆっくりと挽いてみていただきたいと思います。きっと心が休まるハズです。

 人との出会いが一期一会であるように、手間をかけて選別されて焙煎されたコーヒー豆との出会いも一期一会です。その素晴らしい出会いを大切にしていただ きたいと思う店主なのでした。



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