| No.018
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2004年12月30日 |
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「回顧 -2004-」
本日の営業もあと15分という時点で、店主はこのエッセイを書いています。年末の忙しい中を、今日もたくさんの方たちちご来店いただいて、本当に嬉しい気 持ちで一杯です。 昨年の今日は、突然の出来事により店を臨時休業しておりましたので、今年の最終営業日を無事に終わらせることができたことには感慨深いものがあります。 2004年は最悪のスタートで始まりました。2003年末、店主は胆石が原因の"急性胆のう炎"による激痛に襲われ、そのまま入院してしまいました。一時 的に痛みは和らいだものの、今後の不安を一掃するためには"胆のう"を切除しなくてはならないということで、"胆のう"の切除手術を受けるために、 2004年の１月、松本国立病院において、腹腔鏡を用いた"胆のう"摘出手術を受けました。 ”胆のう”を切除しても生活には何の支障もない・・・という説明を医師から説明していただいたとはいえ、生まれてから今まできちんと機能してきた臓器を摘 出するというのは、何とも説明しがたい不安が大きく、できることならば手術から逃げ出したい・・・というのが店主の本心でした。それでも店主がこの手術を 受けようという決心をしたのは、「いったん炎症を起こした”胆のう”を放っておくと、将来、ガン化する可能性が高い」という説明を受けたことに他なりませ ん。 2001年に父をガンで失い、2002年に義父もガンで失っておりましたので、”ガン”という病名は、店主にとっても妻にとっても、もっとも聞きたくない キー ワードだったからです。 救急車で病院に運ばれた2003年12月19日の未明は、数時間前から降り始めた雪でうっすらと道路が雪化粧していました。何とか自宅のベッドから救急車 に乗り込んだことはよく憶えているのですが、救急車に乗ってからの状況はあまりよく憶えていません。胃の下部あたりに宿った激痛はいつしか呼吸するのも困 難なくらいの苦しみにとって変わり、それはすでに”痛み”という感覚を超えていました。後で見せてもらったレントゲン写真の中の私の”胆のう”は、通常の 数倍の大きさに膨れ上がっていましたから、体が発した痛みのシグナルは相当のものだったに違いありません。 今になって思うのは、私の痛みの大きさよりも、家族がその時に味わったであろう気持ちの大きさです。その夜、妻は、”胃が痛い”と言い始めた私を見て、い つもとは違う胸騒ぎを感じたようで、私がベッドにもぐり込むと同時に、その日の夜間の緊急医はどこかなどを調べてくれていたようです。”救急車を呼ぼう か？"という問いに私がうなずいてからの彼女の素早い対応がなかったら、私は更なる痛みでのたうちまわっていたことでしょう。そして入院、手術、すべての 時において妻がどのような気持ちでいたのか考えると、申し訳ない気持ちで一杯になるのです。 そして手術を終えて退院しからは、当店を訪れてくれるお客様たちにたくさんの励ましをいただきました。１ヶ月近くも”臨時休業”の貼り紙だけをして店を 閉めていたのですから、店を再開したときには「もうあのお客様は来てくれないかな・・・」などと弱気になることも多々ありました。しかしながら「年末は仕 方ないからスーパーのコーヒーを飲んでいたよ」と笑いながらまた来店してくれたお客様の言葉にどれほど勇気づけられたことか。珈琲豆を買う。ただそれだけ の目的を達成するのであれば、実に様々な場所でそれをおこなうことができます。しかし、常連のお客様たちは、またこの店に足を運んでくれたのです。美味し いコーヒーを届けることでお客様に幸せを届けたい・・・などというのはとてもおこがましいことで、実は私がお客様たちからたくさんの幸せを運んできても らっているのではないか・・・と最近では思うようになりました。コーヒー好きなお客様との温かいコミュニケーション、私をいつも支えてくれた家族、すべて の人に感謝したい2004年でした。 十色珈琲もオープン時に比べれば常連様の数も増えてまいりました。しかし、まだまだ本当のコーヒーを知らない方々がこの街にはたくさんいます。そして何よ りこの店を営んでいる私たち夫婦が、まだ、コーヒーという奥深い飲み物の一端に触れたに過ぎません。新た な年を迎えるにあたり、亡き父の遺した言葉を改めて胸に刻み、更なる前進を続けたいと思っています。 「驕るなかれ、侮るなかれ、卑屈になるなかれ。」 この言葉を胸に、これからも一歩づつゆっくりと、しかし確実に歩んでいかなくては・・・と 思う店主なのでした。 来年も何卒よろしくお願いいたします。 |