No.015 / 2004年11月11日

「コーヒー1杯の幸せ」

   今年は発生する台風がことごとく日本列島を縦断していき、全国各地で大きな被害が出ました。その台風の被害を忘れる間もなく中越地震が発生し、自然のあま りにも大きな力を改めて思い知らされました。海外でも例外ではなく、カリブ海周辺諸国に上陸した大型ハリケーン「アイバン」は、コーヒーの生産国を直撃し て、コーヒーの木がかなりのダメージを受けたようです。例えばジャマイカではブルーマウンテンが被害を受け、今年の収穫量は4割ほど減となるようです。来 年はきっとブルーマウンテンの値段が高騰することでしょう。このような現状を目にして、「コーヒーは農作物なんだ・・・」という当たり前の事実を再確認す ることとなります。自国でコーヒーを生産していない日本人にしてみれば、コーヒー豆が農作物であるということを意識することはあまりありません。スーパー マーケットに整然と並んでいるコーヒーを見ていれば、なおさら「農作物」という意識は薄れます。天からさずかった大切な飲み物であることを感謝しつつ、1 杯のコーヒーを大切にしたいものですね。

 中越地震で避難生活を送っている方々の生活状況がTVから伝わってきます。もしも自分が同じ立場に置かれたら何を欲するだろうか・・・。そんな事を考え ました。新鮮なコーヒー豆を挽くときの香ばしい香り、湯を注いだときの芳醇な香り、まずはそれを欲することでしょう。コーヒーを飲む。今となっては当たり 前のように自分の中にルーティン化されたその一連の行為こそが私の幸せそのものです。たった1杯のコーヒー。それが人々にどれほどの幸せを与えることで しょう。避難生活を送られている方々の生活が少しでも早く正常化に向かうことを願ってやみません。家族と笑顔で向き合ってゆっくりとコーヒーを飲む。あた り前の毎日こそが人生の至福だと私は考えます。

 今日は私の娘たちがかつて在園していたS幼稚園において、コーヒーの講習会をおこないました。S幼稚園にお子さんを預けていらっしゃるお母さん方が参加 している「陶芸サークル」からお声をかけていただいたのです。皆さん自ら作成したコーヒーカップでコーヒーを飲んで見たいというのが事の発端です。どうせ 飲むならきちんとしたコーヒー豆の知識を知り、きちんとしたドリップの仕方を習ってみたい・・・そのための力に少しでもなれればと、喜んで引き受けさせて いただいた次第です。私の講義でどれくらいのお母さん方に「コーヒー1杯の幸せ」を伝えることができたが、甚だ不安ではありますが、それでも色んなコー ヒーを飲み比べてみて「あっちの方が好み」「いや、こっちの方が美味しいよ」などという会話が聞こえてきて、こちらも幸せな気分にさせていただきました。 十人十色の楽しみ方で、一人でも多くの方に「コーヒー1杯の幸せ」を感じて欲しいと思う店主です。


  自分で作った陶器のカップでコーヒーを飲む。この上ない贅沢ですよね。そのカップで飲むコーヒーは、どんなに高価なコーヒーカップで飲むコーヒーよりも美 味しいに違いありません。

 自分でカップを作る。自分でコーヒーを淹れる。その小さな兆戦の連続こそが人生そのものだと思うのです。

 皆さん子育ての真っ最中で、コーヒーをのんびりと淹れる余裕などないかも知れません。それでも願わくば、コーヒーを淹れるときくらいは、せっかくの「人 生の至福」をゆっくりと楽しんでいただきたいな・・・と思うのでした。

   

  
 地球上では今日も争いが繰り返されています。どこかの国の大統領選が終了した瞬間に、新たなミサイルがいくつも空を飛び交いました。そして様々な自然の 猛威・・・。私たちの人生はあまりにももろく、ちっぽけなものです。たった1杯のコーヒーをゆっくりと飲むことさえもままならない人びとが、この星にはた くさんいるのです。誰もが「コーヒー1杯の幸せ」を感じられるような世界が訪れるのはいつのことだろう・・・そんなことを思う店主なのでした。



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十人十色のコーヒータイムを演出する、Toiro Coffeeです。
http://www.toirocoffee.com