No.008 / 2004年07月26日

「コーヒー・チェリーを夢みて」

  「コーヒー豆」を毎日のように手にしている人でも、実際のコーヒー豆がどのようなものなのか、正確に説 明できる方はそう多くないかと思います。コーヒーは赤道をはさんだ南北両回帰線(北緯25度、南緯25度)内の熱帯、亜熱帯地域の国々で主に生産されてい ま す。当店で使用しているコーヒー豆はすべて「アラビカ種」という品種で、標高1000m〜2000mの高地で生産される、味、香りとも高品質なコーヒー豆 です。低地でもコーヒーの木は生育しますが、低地では病害にかかりやすいため、病害に強い「ロブスタ種」というコーヒーの栽培が中心となっています。ロブ スタ種は強烈な苦味をもっており、ストレートで楽しむには不向きとされていて、実際にはインスタントコーヒーや缶コーヒーの原料として出荷されているもの がほとんどです。

 コーヒーの木には、サクランボほどの大きさの実がつきます。この実はコーヒー・チェリーと呼ばれ、熟すると真っ赤な色になります(当店で販売している 「アマレロ・ブルボン」のように、黄色く完熟する希少種もあります)。この熟したコーヒー・チェリーの果肉を取り除くと、硬い殻に覆われた種子がでてきま す。この種子の殻(パーチメントと呼ばれます)を取り除くと、薄い皮に覆われた状態の種子となります。これがコーヒーの生豆です。実際には焙煎することで 薄皮は取れてしまいますので、皆様が手にする茶色いコーヒー豆は、余分なものを一切まとっていないツヤツヤの状態の豆となります。

 私は恥ずかしながら、いまだ実際のコーヒー・チェリーというものを見たことがありません。当店に卸されてくるのは、上記のような幾重もの外皮を取り除く 作業がおこなわれた後のコーヒー豆です。コーヒー・チェリーは生の実の状態では輸入されていませんから、これを実際に見るためには、コーヒーを生産してい る農園にいかないといけないということになります。コーヒーの生産地域は冒頭で申し上げたように「コーヒーベルト」と呼ばれる地域に集中していますが、日 本でも温暖な一部の地域では生産がおこなわれています。また、一般の観葉植物としても苗木が販売されておりますので、「それなり」の環境を用意してあげれ ば、長野県おいてもて育てることは不可能ではありません。かくいう我が家にも、1本のコーヒーの木があります。開店の記念にいただいたものなのですが、開 店当時 は20cmほどだった苗木も、今では1mを超える立派な木になってきました。コーヒーの木は寒さには弱いですから、屋外で育てるにはビニールハウスなどを 用いる必要がありますが、室内であれば問題なく育てられるようです。早ければ3年ほどで花が咲き、コーヒーの実がつくようなのですが、我が家のコーヒーの 木はいつになったら実をつけてくれることでしょう。

 もしコーヒー・チェリーがなるようであれば、ぜひとも収穫して、自らの手で焙煎してみたいと考えています。収穫したコーヒー・チェリーを天日干しにして 果肉を落とし、十分に乾燥させて外皮を取り除きます。いつも使用している焙煎釜で焙煎するほどの量は収穫できないでしょうから、手網に入れてキッチンのガ スコンロで焙煎することになるでしょう。



我が家のリビングにて、すくすくと育っているコーヒーの木です。水以外は一切肥料等はあげていませんが、現時点では何も問題なく順 調に成長しているようです。店主の身長(177cm)を超える日も、そう遠くなさそうです・・・。このまま収穫を迎えれば、完全無農薬の「オーガニック・ コーヒー豆」ということになります。もっとも「オーガニック」とかなんだか言う前に、きちんと飲用に耐える味になるのかが心配なのですけれども・・・。
 
 もしも、我が家のリビングにて収穫する正真正銘の「トイロ・コーヒー」を飲んでみたい方がいらっしゃいましたら、今からご予約ください(笑)。いつの日 にか我が手に染まる赤い色を一人思う店主なのでありました。



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十人十色のコーヒータイムを演出する、Toiro Coffeeです。
http://www.toirocoffee.com