No.002 / 2004年04月18日

「ブルーマウンテンを売っていないコーヒー豆屋」

当店へいらっしゃったお客様から、「ブルーマウンテンは置いていないの?」というご質問をたまにお受けいた します。ジャマイカ産出のブルーマウンテンは、 苦 味、酸味、甘みのバランスが素晴らしい豆で、世界最高峰のコーヒー豆とされており、世界で唯一樽詰めで生豆が出荷されることでも有名です。そんなコーヒー 通ならば誰もが知っている「コーヒー豆の王者」を扱っていないというのは、「トロを扱っていない寿司屋」みたいなものだな・・・と店主も少々心苦しく感じ ています。

現時点で当店がブルーマウンテンを扱っていない理由は、やはりその価格になります。生豆の卸値は、他の豆の4倍から5倍くらいであり、他の豆と同様の利益 率をあげるためには、100gあたりの単価は少なくとも\850以上には設定したいところです。ただ、当店の価格設定の基本は、200gのコーヒー豆を 買っても\1000を超えない範囲にしています。やはり毎週のように新鮮なコーヒー豆を求めに来ていただくには、これくらいの価格が適しているように思う のです。もちろんコーヒーというのは趣味性の高い飲み物ですから、多少コストは高めでも面白いコーヒーを飲んでみたいという需要があるのは確かなことで す。でも、「トロ」の味を知るよりも前に、絶妙の酢加減でシメた「シメサバ」や、新鮮な「イワシ」や、その店ごとに個性を感じる「玉子焼き」などを、もっ ともっと知って欲しいと思うのです。そういった様々なコーヒーの味の素晴らしさが普及してこそ、コーヒー文化が一般的になるのだと思います。まだまだ店主 も様々な味わいを模索している状態ですから、ブルーマウンテンを扱うには、もう少し時間がかかりそうです。

長野県はコーヒーを日常的に飲むという文化がまだまだ根付いていないように思います。昨年(2003年)長野市にオープンしたスターバックス長野店の初日 の売上げが、世界中のスターバックスの新規オープン時の売上げ記録を塗り替えたというのは、実はコーヒー文化が根付いていないことの裏返しだと思います。 コーヒー文化がすっかり定着している神戸や横浜だったら、ここまでの売上げには至らなかったでしょう。長野県人の多くは「スターバックス」というブランド に憧れ、そのブランドを手に入れるために群がったのだと思います。私自身、東京でIT関連企業のコンサルタントをしていた時代には、スターバックスにはよ く通いました。産地を明確にしたコーヒー豆の中から好きな味を見つけ出すのは面白かったですし、都会の中に点在した各店は、洒落た店づくりで居心地の良い ひと時をもたらしてくれました。そんなスターバックスも、東京ではすでに一時の勢いを失いつつあると聞いています。それは出店数の多さというのも一因で しょうけれど、スペシャリティー・コーヒーという文化が形成されてきた証のようにも思います。

松本平にも、シアトル系のコーヒーショップ「タリーズ」がオープンしたり、「スターバックス」出店の噂も聞こえています。そういうコーヒーショップが増え ることで、スペシャリティー・コーヒーを気軽に飲むという文化が形成されていくという意味では、大いに歓迎したいところです。その上で、「やっぱり新鮮な 豆 で我が家で淹れるコーヒーが一番美味しい」、「豆はToiro Coffeeで買ってこよう」と言っていただけるようになればいいな・・・と思っています。そんな風にコーヒー文化の土壌を作っていきつつ、当然のように 「トロ」を提供できる店になりたいなあ、と思う店主なのでした




<エッセイのTopに戻る >

十人十色のコーヒータイムを演出する、Toiro Coffeeです。
http://www.toirocoffee.com