No.001 / 2004年04月12日

「パール」

コーヒーを生産する国々を地図上から眺めると、丁度に帯状に並んでいるため、これらコーヒー生産国の並びを 「コーヒーベ ルト」と称しています。コーヒーベ ルトは丁度赤道に沿って並ぶような形になっており、コーヒーを生産するのに都合の良い条件を持った国々は皆一様に暑くて標高の高い地域だということが分か ります。暑い地域というのは、シンガポールのような一部の国を除けば、大抵は経済レベルが低く、いわゆる「発展途上国」とされる国が多勢を占めます。した がって日本のようなサービス産業中心の経済と比べると、農耕で経済を支えている国が多く、国民の多くはコーヒーや様々な農産物を育てて、それらを貴重な収 入源としているのです。

コーヒーを作っている人々は、さぞかし美味しいコーヒーを飲んでいるのだろうと思いがちですが、実際は彼らが口にするのは、市場に出せないような欠点豆を 集めたものです。彼らにしてみれば、コーヒー豆は暮らしを支えるための貴重な農産物です。彼らが丹精込めて育て、家族皆で手摘みしたコーヒー豆は貴重な外 貨を稼ぐための真珠にも等しい価値を持ったコーヒー豆なのです。それらのコーヒー豆のほとんどは、日本、欧米などの先進国で消費されます。

そんなコーヒー豆ですから、せめて素晴らしく美味しいコーヒー豆に「焙煎」してあげたいと思うのです。同じコーヒー豆でも、大きな企業レベルの焙煎では十 分なコーヒーの美味しさを引き出すことができません。これは大量生産での効率を優先せざるを得ない大企業の悲しい現実です。小さな焙煎屋であればあたり前 のようにおこなっている「ハンドピック」(欠点豆を手作業で取り除く作業)をおこなえるはずもなく、一気にたくさんの豆を焼くために、大きなドライヤーの ようなもので熱風焙煎された豆は香りも今ひとつです。それ以上に問題なのは、スーパーなどでパック売りされている豆の賞味期限の長さです。コーヒーの香り は焙煎してからほぼ2週間で終息すると言われています。いくら真空パックしたからといって、コーヒーが何ヶ月も美味しい状態を持続するはずがありません。 そんな酸化が進んだコーヒーを飲んで、「酸っぱいコーヒーは嫌い」と言うような方がたくさんいらっしゃるのですから悲しいことです。焙煎したコーヒー豆は 生鮮食品なのです。出来る限り新鮮なコーヒー豆を、1〜2週間で飲みきる量で買い求めるのが理想です。

せっかくのパールを台無しにしないように、今日も焙煎の道に奮闘する店主です。




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