コシアブラの木の新芽。
新緑の季節の間だけ食べることができる、山の民のごちそうです。



私が子どもの頃は、毎年この季節になると、家族で裏山に山菜採りに出掛けました。コゴミやワラビ、そして忘れてはならないラタの芽。とは言っても、すでにチョコレートや各種スナック菓子が一般的なものになっていた私の世代の子どもたちはそんなものに興味を示すわけがなく、山菜採りはただただ面倒なだけの家族行事だったのですが・・・。大人になって、ようやく山の恵みの味がわかるようになりました。

今ではこの松本平でもかなりメジャーな「コシアブラ」も、私の実家では食す習慣がなかったので、35の時に長野県にUターンしてきて、いろんな人にコシアブラをもらうようになり、さてどうやって食したらいいものか?などと悩んでいたものです。今では旬の味として、いただいたコシアブラをいろんな調理方法で食べるようになりました。

長さが10cmくらいまで成長したものは、山菜の王道である天ぷらがやはり一番美味しい。山菜の独特のアクと苦味がたまらない味わいを醸し出します。5cm前後くらいの比較的小さなものは、さっと茹でておひたしにしていただきます。お酒好きな人にはたまらない一品でしょう。もちろんお酒はてんでダメな私も、このコシアブラのおひたしは大好物です。

天ぷら、おひたしにしても、まだ余るような時は、刻んでゴマ油で炒めて、醤油で味つけしていただきます。これを炊き上がったゴハンに混ぜて、コシアブラごはんにしていただくのですが、これがまた美味し。

海無し県の長野ですから、普段は「美味しい魚が手に入らない!」と嘆いていることが多いワケですが、旬の山菜をいたく時ばかりは、山の民であることを誇りに思うのでした。